薬剤師の採用単価150万円は「投資」か「損失」か? 人件費率を適正化し、収益単価を向上させる調剤薬局の勝ち筋

このコラムでわかること
「薬剤師を一人採用するのに、紹介会社へ年収の35%を支払った。……果たしてこのコストを回収できるのか?」
今、多くの調剤薬局経営者が、高騰する「採用単価(採用コスト)」と、それに見合わない「処方単価(収益性)」の板挟みにあっています。一人あたり150万〜200万円という採用手数料は、中小薬局にとって極めて重い負担です。
しかし、松原会計の視点は少し違います。私たちは薬剤師の採用を単なる「コスト」ではなく、5年で回収すべき「事業投資」と捉えます。本記事では、採用単価に振り回されない経営体質の作り方と、人件費を利益に変える財務戦略を徹底解説します。
- 1. 採用単価(紹介料)に振り回されない経営体質の作り方
- 1.1. 「垂れ流し」の採用コストを再定義する
- 2. 薬剤師の「給与単価」と「営業利益」のデッドライン
- 2.1. 処方箋40枚の壁と適正人件費
- 3. 【収益単価の向上】薬剤師一人あたりの技術料を最大化する
- 3.1. 薬剤師の「単価」は加算で決まる
- 3.1.1. ① 「かかりつけ薬剤師指導料」によるファン化と単価増
- 3.1.2. ② 「地域連携体制加算」という経営基盤の強化
- 3.1.3. ③ 「診療科目に合わせた専門接客」による無形の資産化
- 4. 「働きやすさ」による差別化が、結果として採用単価を下げる
- 4.1. 採用紹介料 vs 福利厚生費
- 5. 【松原会計独自の視点】スケールメリットで採用競争に勝つ
- 5.1. M&Aによる「人材の流動化」
- 6. 【結び】薬剤師採用を「点」ではなく「線」の財務で捉える
- 6.1. 調剤薬局業界に強い税理士をお探しの方へ
採用単価(紹介料)に振り回されない経営体質の作り方
薬剤師採用における「採用単価」とは、一般的に人材紹介会社に支払う手数料(年収の30〜35%)を指します。
「垂れ流し」の採用コストを再定義する
150万〜200万円の採用手数料を支払った場合、その薬剤師が稼ぎ出す利益で手数料分を回収するのに、多くの店舗では半年から1年を要します。もし、その薬剤師が1.5年で離職してしまえば、採用コストを回収した直後にまた次の採用コストが発生する「採用貧乏」のループに陥ります。
松原会計のアドバイスは明確です。「採用にお金をかける前に、定着に知恵を絞るべき」。離職率を下げることが、結果として最も安上がりな財務戦略になるのです。
薬剤師の「給与単価」と「営業利益」のデッドライン
薬剤師の給与はスタートが高い一方で、上限に達するのも早いという特徴があります。
処方箋40枚の壁と適正人件費
薬剤師一人が1日に対応できる処方箋枚数は、安全性の観点から「40枚」という法的な目安があります。
| 項目 | 1人体制(40枚/日) | 2人体制(81枚〜/日) |
| 月間処方箋枚数 | 約800〜900枚 | 約1,600〜1,800枚 |
| 想定技術料売上 | 約200万〜225万円 | 約400万〜450万円 |
| 許容人件費(40%) | 80万〜90万円/月 | 160万〜180万円/月 |
※人件費には社会保険料や福利厚生も含みます。
この計算式から外れ、「欠員を埋めるために相場より100万円高い年収で採用する」といった判断を繰り返すと、店舗の営業利益は一瞬で吹き飛びます。松原会計では、採用前に必ず「この年収で採用して、店舗の損益分岐点(BEP)はどう変わるか?」というシミュレーションを実施します。
【収益単価の向上】薬剤師一人あたりの技術料を最大化する

採用単価が高いのであれば、薬剤師一人あたりの「収益単価(技術料)」を上げるしかありません。
薬剤師の「単価」は加算で決まる
単に処方箋枚数を追うだけの経営は、薬剤師の労働環境を悪化させ、離職を招くリスクがあります。これからの薬局経営に求められるのは、薬剤師一人ひとりが生み出す「技術料の単価」を戦略的に高めることです。

① 「かかりつけ薬剤師指導料」によるファン化と単価増
薬剤師が特定の患者様の「かかりつけ」になることで、1回あたりの調剤技術料に加算がつくだけでなく、患者様が他の病院にかかった際も自局に処方箋を持ってきてくれるようになります。
- 経営的メリット: 処方箋1枚あたりの単価が上がると同時に、患者様の「固定客化(リピート率向上)」に繋がります。
- 松原会計の視点: 「この薬剤師さんにお願いしたい」と思われる信頼関係は、広告費ゼロで優良顧客を獲得し続ける最強のマーケティング資産です。
② 「地域連携体制加算」という経営基盤の強化
24時間対応や在宅業務の受け入れ、医療機関との情報共有など、地域医療に貢献する「体制」を整えることで取得できる加算です。
- 経営的メリット: 処方箋1枚ごとにかかる基本の点数が底上げされるため、全スタッフの生産性が一律に向上します。
- 松原会計の視点: これは「設備と仕組み」への投資です。薬剤師に「頑張って枚数をさばけ」と強いるのではなく、経営側が高い点数を取れる「環境(ステージ)」を用意することで、人件費率を適正化できます。
③ 「診療科目に合わせた専門接客」による無形の資産化
これは点数表には直接現れない「実力」の加算です。例えば、小児科門前なら子供や親へのきめ細やかな配慮、内科門前なら長期療養への深い理解。こうした「診療科目に特化した接客品質」が、処方元ドクターからの絶大な信頼を生みます。
- 経営的メリット: ドクターが「あの薬局なら安心して任せられる」と判断すれば、処方箋の流出が防げ、長期的に安定した売上単価が確保されます。
- 松原会計の視点: 専門接客のための教育を「コスト」ではなく、将来の単価を上げるための「投資」と捉えられるかが、上手くいっている薬局とそうでない薬局の分かれ目です。
そして薬剤師に「経営視点」を持たせることも重要です。松原会計では店長向けのマネジメント教育を通じて、「どの加算を取れば、自分の給与の根拠となる利益が生まれるのか」を理解してもらうサポートを行っています。
「働きやすさ」による差別化が、結果として採用単価を下げる
給与(金銭報酬)だけで戦おうとすると、資本力のある大手チェーンやドラッグストアには勝てません。中小薬局の勝ち筋は「非金銭報酬」にあります。
採用紹介料 vs 福利厚生費
例えば、採用紹介料に150万円払う代わりに、その150万円を「既存スタッフの有休消化時の応援体制構築」や「柔軟なシフト管理システム」に投資したらどうなるでしょうか。
- 離職率が下がる → 採用紹介料が発生しなくなる(年間数百万円の節約)
- スタッフに心の余裕ができる → 接客品質が上がる
- ドクターからの信頼向上 → 処方箋枚数が安定・増加する
特に小児科門前などでは、「子供にニコッと笑顔で対応できるか」「バイバイと手を振れるか」といったソフト面が利用者の心象を良くし、経営を安定させます。こうした「余裕」を生むための投資こそが、結果として採用単価を劇的に下げるのです。
【松原会計独自の視点】スケールメリットで採用競争に勝つ
最後に、松原会計が提唱する「攻めの採用財務戦略」をお伝えします。
M&Aによる「人材の流動化」
単独店舗の経営では、薬剤師が一人辞めるだけでパニックになり、足元を見られた高額な求人を出さざるを得ません。しかし、M&Aや新規出店で店舗数を増やし、「グループ内で人員を融通できる体制」を作れば、採用の緊急度が下がります。
松原会計では、3億円のM&A案件を検討する際も、単なる店舗収益だけでなく、「この買収によってグループ全体の採用力がどれだけ高まるか」という無形の資産価値も評価に加えます。
【結び】薬剤師採用を「点」ではなく「線」の財務で捉える

薬剤師の採用単価は、今後も高止まりが予想されます。だからこそ、経営者は「紹介料をいくら払うか」という「点」の悩みから卒業し、「採用・定着・単価向上をどう繋げるか」という「線」の財務戦略を持つ必要があります。
- 今の採用コストが、将来の利益でいつ回収できるかわからない
- 高い給与を払っているのに、スタッフのモチベーションが低い
- 人件費率が適正かどうか、プロの視点で診断してほしい
そうお考えの経営者様。松原会計は、税務の枠を超えた「パートナー」として、あなたの薬局の採用と財務をトータルでサポートします。
調剤薬局業界に強い税理士をお探しの方へ

調剤薬局業界は、診療報酬改定や資金繰り、人件費管理など特有の課題があります。
松原会計では、月次決算による数字の見える化を通じて、利益とキャッシュを残す経営をサポートしています。調剤薬局経営に関する詳しい内容はこちらをご覧ください。



