門前薬局の処方箋枚数はどれくらい? 診療科別の傾向と薬局経営で失敗しない出店戦略

このコラムでわかること

本コラムでは、調剤薬局の開業で失敗してしまう人に共通する原因が、「門前薬局で処方箋枚数さえ確保できれば安定する」という前提に依存した経営判断にあることを解説しています。

そのうえで、実際には処方箋枚数だけに頼ったビジネスモデルは制度改定や環境変化の影響を受けやすく、安定経営には資金繰りや収益構造まで踏まえた戦略設計が不可欠であることをお伝えしています。

特に2026年度(令和8年度)の調剤報酬改定では、処方箋集中率の高い門前薬局を対象とした「門前薬局等立地依存減算」が新設され、国が「面分業」への転換を明確に推進する方針を打ち出しました。処方箋枚数を追いかける経営スタイルそのものが、制度面から再検討を迫られている転換点にあるといえます。

さらに、調剤薬局の開業を成功させるためには、単なる枚数重視ではなく、将来を見据えた数値管理と経営視点が重要であることが理解いただけます。あわせて、処方箋枚数・処方箋単価の全国平均データ(厚生労働省・日本薬剤師会の公表資料)や、薬剤師の法定人員配置基準についても具体的な数値で解説します。

門前薬局とは

門前薬局とは、特定の医療機関の近くに立地し、その医療機関の処方箋を中心に受け付ける薬局のことです。

例えば次のような薬局が該当します。

  • 内科クリニックの前の薬局
  • 小児科の隣の薬局
  • 整形外科の近くの薬局
  • 医療モール(複数の診療科が入居する医療ビル)の1階にある薬局

門前薬局は、特定の医療機関からの処方箋を安定的に受け付けられるため、開業直後から一定の患者数を見込みやすいというメリットがあります。そのため、調剤薬局の新規出店の多くが、依然として門前立地を選択しているのが実情です。

一方で、門前薬局では処方内容や患者層がその医療機関に大きく影響されます。そのため、処方箋枚数の傾向は診療科によって大きく変わるのが特徴です。加えて、後述するとおり、2026年度の制度改定によって「特定の医療機関への依存度が高い薬局」そのものが調剤報酬上の減算対象となる仕組みが新設されており、単に「クリニックの前だから安心」とは言い切れない時代に入っています。

門前薬局の処方箋枚数の目安

一般的な規模感の目安

一般的に薬局経営では、1日あたりの処方箋枚数の目安は次のように考えられます。

1日あたりの処方箋枚数薬局の規模特徴
20枚以下小規模薬局立ち上げ期や患者数の少ないクリニック門前に多い
30〜40枚一般的な門前薬局標準的な収支バランスが取りやすい水準
50〜60枚繁盛薬局人員体制の強化が必要になりやすい水準
80枚以上非常に忙しい薬局複数名の薬剤師配置が必須になる水準

ただし、この枚数は診療科によって大きく変わります。

例えば

  • 小児科 → 患者数が多く処方箋枚数が増えやすい
  • 精神科 → 患者数は少ないが長期処方が多い

といった違いがあります。

全国平均で見た処方箋枚数

全国平均は公表された月間処方箋枚数(約1,288枚)を当事務所が営業日20~25日で割り戻して試算した参考値

自院の枚数が「多いのか少ないのか」を判断するには、全国平均との比較も参考になります。厚生労働省「調剤医療費(電算処理分)の動向」(令和7年度年度集計、2026年8月公表)によれば、全国の処方箋枚数(受付回数)は年間8億8,669万枚で、前年度比▲1.1%と、新型コロナウイルス流行後初めて減少に転じました。少子高齢化による患者数の伸び悩みが、統計上もはっきり現れ始めています。

1施設(薬局)あたりで見ると、月間の処方箋枚数はおよそ1,288枚(令和7年度3月時点、電算処理分ベース)です。これを月間の営業日数(20〜25日程度)で割り戻すと、全国平均としては1日あたりおおむね51〜64枚程度に相当する計算になり、上記の目安表でいう「繁盛薬局」に近い水準に位置していることがわかります。(※この「1日あたり枚数」は公表された月間数値をもとに当事務所が営業日数で割り戻して算出した試算値であり、公的機関が公表した数値ではありません)

つまり、開業計画の段階で「1日30〜40枚を確保できれば十分」と考えてしまうと、実は全国平均よりかなり控えめな水準であるケースも少なくありません。処方箋枚数の目標設定は、業界の目安表だけでなく、全国平均・地域の医療圏データの両方を踏まえて行うことが望ましいといえます。ただし、前述のとおり全国全体の処方箋枚数自体が減少局面に入っていることを踏まえると、今後は「枚数の伸び」を前提にした事業計画は立てにくくなっていくと考えられます。

なお、ここで注意したいのが「薬局全体の処方箋枚数の平均」と「薬剤師1人あたりの処方箋枚数の平均」は別の数値だという点です。薬剤師1人あたりの1日の処方箋取扱枚数を調べたアンケート調査では、もっとも回答が多いゾーンは16〜20枚で、平均するとおよそ18枚程度、30枚を超える薬局は全体の約17%にとどまるというデータもあります。人員計画を立てる際は、「薬局として何枚受けるか」と「薬剤師1人が何枚さばくか」を分けて試算する必要があります。

全国平均で見た処方箋単価

処方箋単価についても、公的統計から全国平均の数値を確認できます。厚生労働省「調剤医療費(電算処理分)の動向」(令和7年度年度集計、2026年8月公表)によれば、令和7年度(2025年度)の処方箋1枚当たり調剤医療費(処方箋単価)は全国平均9,839円(前年度比+5.0%)でした。内訳は技術料2,676円(+3.2%)、薬剤料7,144円(+5.7%)、特定保険医療材料料19円(+4.1%)です。処方箋単価は近年上昇傾向が続いており、薬価改定による下押し要因を、後発医薬品を含む薬剤料の伸びが上回っている状況がうかがえます。

医療機関の規模別に見ると、診療所(クリニック)分は平均6,876円、病院分は19,773円(大学病院は41,576円)と大きな差があります(この機関別内訳は執筆時点で公表されている令和6年度データが最新です)。

さらに直近の動向としては、2026年1月分(令和7年度1月号)の単月データで、処方箋単価は全国平均10,101円(前年同月比+5.8%)まで上昇しており、都道府県別に見ても最も高い北海道で12,151円、最も低い佐賀県で8,804円という開きが見られます。薬価改定や後発医薬品の使用状況によって年度・月ごとに変動する数値であるため、最新の統計を都度確認することをおすすめします。

門前薬局を出店・運営するうえでは、この全国平均の処方箋単価(令和7年度で9,839円、上昇傾向)を一つの基準としつつ、次章で解説する診療科別の単価差を踏まえて収益シミュレーションを行うことが重要です。

処方箋の「1枚」「1受付」の数え方

処方箋枚数を正しく比較するには、そもそも調剤報酬上「1枚(1受付)」がどうカウントされるかを理解しておく必要があります。患者が持参した紙の枚数と、調剤基本料の算定上の「受付回数」は、必ずしも一致しません。主なルールは次のとおりです。

  • 同一の保険医療機関・同一の医師が交付した処方箋であれば、複数枚であっても受付1回とカウントされます。
  • 同一の医療機関でも、歯科以外の処方箋と歯科の処方箋を同時に受け付けた場合は、受付回数は2回として扱われます。
  • 複数の医療機関が交付した処方箋をまとめて受け付けた場合、1回目は通常の点数で、2回目以降は所定点数の80%相当で算定されます。

こうしたカウントルールは、後述する「処方箋集中率」(特定の医療機関からの処方箋が占める割合)の計算にも直結し、2026年度改定で新設された「門前薬局等立地依存減算」の適用可否を左右する重要な要素にもなっています。日々の受付件数を漫然と積み上げるのではなく、どの医療機関から、どのような形で処方箋を受け付けているかを正確に把握しておくことが、制度改定への備えにもつながります。

処方箋枚数と薬剤師の人員体制の関係

処方箋枚数は、そのまま人件費に直結する数値でもあります。薬局の薬剤師の員数を定める省令(昭和39年厚生省令第3号)では、1日平均の取扱処方箋数が40枚までは薬剤師1人、それを超えるごとに1人ずつ増員が必要と定められています。つまり、

  • 1日41〜80枚 → 薬剤師2人以上
  • 1日81〜120枚 → 薬剤師3人以上

が法令上の目安となります。処方箋枚数が増えること自体は喜ばしいことですが、その分だけ人員体制も比例して重くなるため、「枚数が増える=利益が比例して増える」わけではないという点は、開業・出店を検討する際にあらかじめ押さえておくべきポイントです。この点は後述の「薬局経営は処方箋枚数だけでは決まらない」でも詳しく触れます。

診療科別の処方箋枚数の傾向

門前薬局の処方箋枚数には、診療科ごとに次のような特徴があります。あわせて、厚生労働省「調剤医療費(電算処理分)の動向」で公表されている診療科別の処方箋単価(診療所分・全国平均)も参考として掲載します。

診療科処方箋枚数処方箋単価(参考値)特徴
内科多い8,455円慢性疾患患者が多く安定
小児科多い4,391円季節変動あり
整形外科多い5,217円高齢者患者が多い
皮膚科中程度5,775円回転が速い
耳鼻科季節変動大4,521円花粉症などで増減
眼科中〜少3,720円単価は他科より低めだが処方内容がシンプル
精神科少〜中公的統計上の診療科別区分なし(長期処方傾向)長期処方が多い

※単価は公表されている統計データを参考に当事務所で整理した概算値であり、実際の単価は後発医薬品の使用割合や処方日数、地域差によって変動します。また、年度によって数値が改定される場合がありますので、正確な最新値が必要な場合は厚生労働省の公表資料を直接ご確認ください。眼科・小児科・耳鼻咽喉科・皮膚科・整形外科は単価が比較的低く、内科・外科は高めになる傾向があります。

それぞれの特徴を見ていきましょう。

公表データをもとに当事務所が整理した参考値(事務所試算)/精神科は公的統計上の診療科別区分なし

①内科門前薬局

特徴

内科は門前薬局にとって最も安定した処方箋枚数が期待できる診療科です。
慢性疾患の患者が多く、継続的な通院が発生しやすいのが特徴です。

主な処方内容

  • 高血圧治療薬
  • 糖尿病治療薬
  • 脂質異常症治療薬
  • 胃薬
  • 風邪薬

処方箋枚数の傾向

比較的多く、安定した処方箋枚数になりやすい傾向があります。処方箋単価も診療科の中では高めの水準にあり、枚数×単価の両面で売上のベースを作りやすい診療科です。

メリット

  • 慢性疾患患者が多く安定した売上になりやすい
  • 処方内容が比較的幅広く薬局として標準的
  • 単価水準が高めで、枚数の割に売上が伸びやすい

注意点

クリニック開業直後は患者数が少なく、2年ほど赤字になるケースもあります。3年目以降に患者が増え安定することが多いといわれています。また、内科は競合の参入も多い診療科であるため、後述する「門前薬局等立地依存減算」の対象になりやすい立地条件(医療機関の周辺への薬局の密集)にも注意が必要です。

②小児科門前薬局

特徴

小児科は患者数が多く処方箋枚数が増えやすい診療科です。
特に冬季など感染症の流行期は来院数が増加します。

主な処方内容

  • 抗生物質
  • 解熱剤
  • 咳止め
  • 去痰薬
  • アレルギー薬

処方箋枚数の傾向

患者数が多いため、処方箋枚数は比較的多くなる傾向があります。一方で処方箋単価は他の診療科と比べて低めの水準にとどまるため、枚数の多さがそのまま売上規模に直結しにくい点は理解しておく必要があります。

メリット

  • 立ち上がりが早い
  • 薬剤の種類が比較的少なく在庫管理がしやすい

注意点

近隣に新しい小児科が開業すると患者が分散しやすいという特徴があります。また、季節による処方箋枚数の変動が大きいため、繁忙期の人員体制と閑散期の人件費負担のバランスを事前に想定しておくことが重要です。

③整形外科門前薬局

特徴

整形外科は高齢者患者が多く、通院頻度が高い診療科です。

主な処方内容

  • 湿布
  • 鎮痛薬
  • 消炎鎮痛剤
  • 筋弛緩薬

処方箋枚数の傾向

患者数は比較的多く、処方箋枚数も多くなりやすい傾向があります。ただし処方箋単価は診療科の中でも低めの水準であり、「枚数は多いが売上は伸びにくい」典型的な診療科でもあります。

メリット

  • 高齢者患者が多く通院頻度が高い
  • 患者数が安定しやすい

注意点

湿布など薬価の低い薬剤が中心になることが多く、処方箋枚数の割に利益が出にくいケースがあります。枚数だけを見て出店を判断すると、想定していたほどの収益が得られない典型的なパターンといえます。

④皮膚科門前薬局

特徴

皮膚科は患者層が幅広く、回転率が高い診療科です。

主な処方内容

  • 外用ステロイド
  • 保湿剤
  • 抗アレルギー薬
  • 抗真菌薬

処方箋枚数の傾向

患者回転が速いため、中程度の処方箋枚数になることが多い傾向があります。単価水準は他科と比べてやや高めで、枚数と単価のバランスが取れた診療科です。

メリット

  • 患者層が幅広い
  • 立地の影響を受けにくい

注意点

軟膏の調剤や混合調剤が多くなる場合があり、調剤作業の手間が増えるケースがあります。作業負担が増える分、1枚あたりの処理時間も考慮した人員計画が必要です。

⑤耳鼻科門前薬局

特徴

耳鼻科は季節による患者数の変動が大きい診療科です。

主な処方内容

  • 抗アレルギー薬
  • 点鼻薬
  • 抗生物質
  • 去痰薬

処方箋枚数の傾向

花粉症や風邪の流行期には処方箋枚数が大きく増える傾向があります。

メリット

  • 繁忙期には処方箋枚数が大きく伸びる
  • 患者回転が速い

注意点

閑散期との患者数の差が大きいという特徴があります。経営としては2年ほど赤字になるケースもあります。3年目以降に患者が増え安定することが多いといわれています。繁忙期に合わせて人員を厚くすると閑散期の固定費が重くなり、逆に閑散期基準にすると繁忙期に薬剤師1人あたりの処方箋枚数が法定の目安(40枚)を超えやすいという、人員体制上のジレンマを抱えやすい診療科でもあります。

⑥眼科門前薬局

特徴

眼科は患者層が幅広く、比較的立地の影響を受けにくい診療科です。

主な処方内容

  • 点眼薬
  • 抗アレルギー点眼薬
  • 白内障術後薬

処方箋枚数の傾向

処方箋枚数は中程度〜やや少なめになるケースが多い傾向があります。処方箋単価も診療科の中では低めの水準です。

メリット

  • 点眼薬中心で調剤が比較的シンプル
  • 調剤作業がシンプルな分、少人数の体制でも運営しやすい

注意点

患者数が多くない場合、処方箋枚数が伸びにくいことがあります。単価も高くないため、枚数・単価の両面で売上規模には上限が生まれやすい診療科です。

⑦精神科門前薬局

特徴

精神科は患者の継続率が高い診療科です。長期治療が必要なケースが多く、同じ患者が定期的に通院します。

主な処方内容

  • 抗うつ薬
  • 抗不安薬
  • 睡眠薬
  • 気分安定薬

処方箋枚数の傾向

患者数は多くありませんが、継続的な来局により安定しやすい傾向があります。1回あたりの投薬日数が長期化しやすい処方内容が多いため、処方箋1枚あたりの単価は他の診療科と比べてやや高めになるケースもあります。

メリット

  • 患者の継続率が高い
  • 処方内容が比較的安定している

注意点

服薬フォローや患者対応など、コミュニケーション面での配慮が重要になる診療科です。

門前薬局の処方箋枚数シミュレーション

薬局売上は次の計算で考えることができます。

売上=処方箋枚数 × 処方箋単価

標準モデル(単価7,000円で試算した場合)

まずは、診療科を問わない標準的な単価(7,000円)で試算した場合の目安です。以下の表はいずれも「処方箋枚数×単価×営業日数」で当事務所が計算した試算値であり、公的統計として公表されている数値ではありません。

1日処方箋枚数平均単価月売上
30枚7,000円約420万円
40枚7,000円約560万円
50枚7,000円約700万円
60枚7,000円約840万円
※営業日20日で計算した概算値です。実際の売上は在庫状況・返戻・薬剤の種類等により変動します。

診療科別モデル(実際の単価水準を反映した場合)

前章で触れた診療科別の処方箋単価を用いると、同じ「処方箋枚数」でも診療科によって月商に大きな差が生まれることがわかります。

1日処方箋枚数内科(単価8,455円)小児科(単価4,391円)整形外科(単価5,217円)眼科(単価3,720円)
30枚約507万円約263万円約313万円約223万円
40枚約676万円約351万円約417万円約298万円
50枚約846万円約439万円約522万円約372万円
60枚約1,015万円約527万円約626万円約446万円
※営業日20日想定。単価は公表データを参考に整理した参考値を用いて当事務所が試算した概算値であり、公的統計そのものではありません。
営業日20日と上記の参考値単価から事務所が試算した概算値(公表統計そのものではありません)

このように、「1日50枚」という同じ処方箋枚数であっても、内科門前であれば月商800万円台が見込める一方、眼科門前であれば400万円に満たない水準にとどまる可能性があります。出店を検討する際は「何枚見込めるか」だけでなく「どの診療科の何円の処方箋が中心になるか」まで含めて試算することが不可欠です。

なお、全国の薬局の平均値(1薬局あたり月間処方箋1,288枚、処方箋単価9,839円=令和7年度厚生労働省データ)をもとに当事務所が計算すると、月商はおよそ1,267万円、年商にしておよそ1億5,200万円が全国平均モデルの目安となります(この月商・年商の数値は公表されているものではなく、当事務所の試算値です)。自院の出店計画がこの水準に対してどの位置にあるのかを確認しておくことも、資金計画上有効です。

ただし実際の利益は「人件費」「家賃」「薬剤在庫」などによって大きく変わります。

【重要】2026年度調剤報酬改定と「門前薬局等立地依存減算」

門前薬局の経営を考えるうえで、2026年度(令和8年度)の調剤報酬改定は見過ごせない内容を含んでいます。それは、特定の医療機関への依存度が高い薬局を対象とした「門前薬局等立地依存減算」が新設されたことです。

なぜ新設されたのか

厚生労働省は、「患者のための薬局ビジョン」の策定から10年が経過したにもかかわらず、処方箋集中率の高い、いわゆる門前薬局の割合がむしろ増加している状況を課題視してきました。そこで2026年度改定では、薬局が特定の医療機関の処方箋に依拠する体制から脱却し、地域全体を「面」で支える「面分業」への転換を後押しする方向性が明確に打ち出されました。

具体的な改定内容

今回の改定のうち、門前薬局の経営に特に影響する主なポイントは次のとおりです。

  • 門前薬局等立地依存減算(新設・▲15点):都市部(特別区・政令指定都市)に所在し、水平距離500m以内に他の薬局がある、処方箋集中率が85%を超えている、かつ大規模病院の周辺や薬局密集地域・医療モール内に立地している――といった条件に該当する薬局が対象です。2026年6月1日以降に新規開設する薬局が対象で、既存薬局には当面適用されません。
  • 処方箋集中率の計算方法の変更:医療モール(医療ビレッジを含む)内に複数の医療機関がある場合、これまでは診療科ごとに個別に集中率を計算していましたが、改定後はモール内の複数医療機関をまとめて1つの医療機関とみなして集中率を計算する方式に変わりました。例えば5科が入るモールで各科から均等に処方箋を受けている場合、従来は各科20%程度だった集中率が、合算後は100%として扱われることになります。
  • 都市部の小規模・高集中率薬局への基準強化:都市部において、処方箋受付回数が少ないにもかかわらず特定の医療機関への集中率が高い新規開設薬局は、より点数の低い「調剤基本料2」の対象に追加されました。
  • 一方で、集中率85%以下の面分業型の薬局が算定する調剤基本料1・3ハについては、面分業を評価する形で点数が引き上げられています。

この改定が意味すること

この一連の改定は、まさに本コラムの結論を裏付ける内容です。「門前薬局として処方箋枚数さえ確保できれば安定する」という発想は、制度が前提そのものを変えにいっていることで、今後さらに通用しにくくなっていく可能性があります。

これから新規に門前薬局を出店しようとする場合は、

  • 出店予定地が「都市部」に該当するか
  • 水平距離500m以内に競合薬局が存在するか
  • 想定される処方箋集中率が85%を超える見込みかどうか
  • 医療モール内への出店の場合、モール全体で集中率を計算すると何%になるか

といった点を、開業前の段階で確認しておく必要があります。既存の門前薬局についても、今回は経過措置の対象であっても、将来の改定で対象が広がる可能性は否定できません。処方箋集中率をあえて下げる(面分業を進める)方向の経営判断が、今後は収益防衛の観点からも重要になってくるでしょう。

門前薬局のよくある失敗パターン

薬局開業では、次のような失敗が起きることがあります。

想定より処方箋枚数が少ない

クリニックの患者数が伸びず

想定50枚 → 実際25枚

というケースがあります。

診療科の特徴を理解していない

整形外科のように患者数が多くても「湿布中心」「薬価が低い」ため利益が出にくい場合があります。

競合薬局の増加

門前薬局は近くに薬局ができると処方箋が分散するというリスクがあります。

競合薬局の増加

前章で解説したとおり、2026年度改定以降は、特定の医療機関への処方箋集中率が高いこと自体が調剤報酬上の減算につながる仕組みが導入されています。「1つの医療機関に処方箋の大半を依存する体制」は、患者数の変動リスクだけでなく、制度改定リスクという新たな側面も抱えることになった点に注意が必要です。

薬局経営は処方箋枚数だけでは決まらない

私たち松原会計事務所では、薬局経営の相談を受ける際に次のポイントを重視しています。

  • 処方箋枚数
  • 処方箋単価
  • 在庫回転率
  • 人件費比率
  • 医療圏人口

これらは、それぞれ単独で見るのではなく、月次決算の中で組み合わせて確認することで初めて意味を持つ数値です。例えば、処方箋枚数が伸びていても、それに比例して薬剤師の増員(人件費)が発生していれば、利益率はむしろ低下しているケースもあります。また、処方箋集中率が高いこと自体が、前述のとおり2026年度改定以降は調剤報酬上のマイナス要因になり得るため、「枚数を増やす」ことと「収益体質を強くする」ことは、必ずしもイコールではありません。

これらを総合的に分析することで、薬局の収益構造を正確に把握することができます。

薬局の出店は一度決めると簡単には変更できません。そのため

  • 医療圏分析
  • 収益シミュレーション
  • 資金計画
  • 制度改定を織り込んだ複数年の収支計画

を事前に行うことが重要です。特に2026年度改定のように、門前立地そのものの評価が変わる制度変更が起きた場合、当初の事業計画を前提から見直す必要が出てくることもあります。だからこそ、開業時点から「枚数ありき」ではなく、数値を継続的に把握できる経営体制を整えておくことが、長期的な安定経営につながります。

まとめ

門前薬局の処方箋枚数は、診療科によって大きく変わります。

主な傾向は次の通りです。

  • 内科 → 安定して処方箋枚数が多く、単価水準も高め
  • 小児科 → 患者数は多いが季節変動あり、単価は低め
  • 整形外科 → 患者数は多いが薬価の低い薬剤が中心で利益は低め
  • 耳鼻科 → 繁忙期と閑散期の差が大きい
  • 皮膚科 → 回転が速く、枚数・単価のバランスが取れている
  • 眼科 → 枚数・単価ともに他科より控えめ
  • 精神科 → 枚数は少ないが継続率が高く長期処方が多い

また、門前薬局の場合は薬局側が診療科を選ぶケースは多くありませんが、診療科の特徴を理解しておくことで、

  • 処方箋枚数の見込み
  • 薬剤在庫の準備
  • 人員配置
  • 経営計画

などをより現実的に立てることができます。

加えて2026年度の調剤報酬改定では、「門前薬局等立地依存減算」の新設に象徴されるように、特定の医療機関に依存した経営そのものが制度上の見直し対象になりました。門前薬局の出店や薬局経営では、単に「クリニックの近くに出店する」というだけでなく、処方箋枚数の見込みや収益構造、そして今後の制度改定リスクまで含めて事前に分析することが重要です。

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松原会計事務所では、薬局経営や医療系ビジネスに関するご相談として、

  • 薬局開業の収益シミュレーション
  • 門前薬局の出店判断
  • 処方箋枚数の売上予測
  • 2026年度改定を踏まえた収支計画の見直し
  • 薬局経営の資金計画
  • 税務・経営アドバイス

などをサポートしています。
「門前薬局として成立するのか判断したい」「制度改定の影響を試算してほしい」といったご相談も可能です。

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参考出典

  • 厚生労働省「調剤医療費(電算処理分)の動向」(令和7年度年度集計、令和7年度1月号、令和6年度、いずれも厚生労働省公表資料)
  • 薬局及び一般販売業の薬剤師の員数を定める省令(昭和39年厚生省令第3号)
  • 2026年度(令和8年度)調剤報酬改定に関する厚生労働省資料

※統計データは公表のたびに更新されます。掲載時点(2026年9月)で入手可能な最新の年度集計・月次データを用いていますが、公開前に最新版をご確認ください。

※本コラム内の「1日あたり処方箋枚数」「月商・年商シミュレーション」など、試算・参考値と明記した数値は、公表統計を基礎として当事務所が一定の前提条件のもとで独自に算出したものです。公的機関が公表した確定数値ではなく、実際の数値や個別の薬局の実態とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。